実は、当店の先代は、元パン職人だったのです。
博多で修行した後、
「日田で50円のショートケーキを売る!」って
イキがって帰って来たものの
「そんなの売れん・・・」
という周りの声に負け(笑)、市内のパン屋で働いていました。
ところが、何年か経った頃、老舗時計店で働いていた弟の
「兄ちゃん、時計屋、面白ぃバイ。」
という話で、なぜかその時計店にお世話になることとなり、
後に独立・・・時計屋になってしまいました。
それから・・・30数年後、
事情により、商店街に移転出店、新たに営業することとなりしました。
しかし、その3ヵ月後、元パン職人の時計屋は、それを見届けるかのように、その生涯を閉じます。
間もないある朝、
店を開けようとしてる私に、
観光客らしき60歳くらいの一人の男性が声をかけてきました。
「50年ほど前、可愛がってもらったタケオさんって方が日田駅の近くで
時計屋をしとんしゃあって、もうずいぶん前に聞いとったとですが・・・」
昭和20年代、今の博多大丸の裏くらいにあった彼のご実家が経営する商店に
職人時代、パンを配達していたらしい。
もう少しだけ早くお越し頂けてたら、二人は何十年ぶりかの昔話が出来てたのに・・・
そして、偶然にも知らなかった元パン職人の足跡を聞くことが出来、
思わず目頭が熱くなった私でした。